私がチェコを訪れたいと思った一番大きな理由、それは「チェコガラスボタン」でした。
小さなガラスの粒に光を封じ込めたような、繊細でありながら存在感を放つその輝き。数年前に偶然アンティークショップで手にしたボタンから、私はすっかり魅了されてしまいコレクションしていました。服につけて楽しむだけでなく、アクセサリーにしたり、箱に並べてただ眺める時間さえ、宝物を抱くような喜びを感じます。
そんな私にとって「本場チェコでガラスの街を訪れる」ことは、この「中欧・東欧ヨーロッパ女ひとり旅」の一大目的でした。
過去の旅の記録はこちらにまとめてます👇
その街の名は、ヤブロネツ・ナド・ニソウ(Jablonec nad Nisou)。プラハから北へと足をのばし、世界中のビーズやガラスボタンが集まる町へと向かいました。
プラハからの行き方
プラハから直通バス(FlixBusなど) があり、プラハの ÚAN Florencターミナル から Jablonec nad Nisouのバス停 へ毎日運行されています。所要時間は 約1時間40分、料金は 269〜270チェココルナ(Kč) 程度。なので日帰りで行くことができます。
出発時刻:6:25〜8:30の間に出発する便があり、所要時間は最長で1時間40分、最短で約1時間24分という便もありました。
運行頻度:FlixBusなら、1日に数多く直行便が運行しており、便数・時間帯も選びやすいのが魅力。
帰りのバスは便数が少ないので、近郊の都市リベレツまで鉄道で行き、そこからバスで帰るのがおすすめです。


Jablonec nad Nisou (ヤブロネツ) の街の風景

到着したヤブロネツは、プラハやブルノのような観光都市とはまったく違う雰囲気。静かな山あいの町で、中心広場に面して教会やカフェが並び、地元の人々が穏やかに行き交っていました。観光客の姿は少なく、むしろ日常の暮らしがそのまま流れているような場所。

歩いていると、木造の家やアールヌーヴォー風の建築が混じり合い、どこか懐かしさを感じます。公園では子どもたちが走り回り、年配の方々はベンチで談笑している。観光地化されすぎていないぶん、「暮らしの中に溶け込んでいるチェコ」を感じられるのが、何よりの魅力でした。
ガラス美術館へ

この町の目玉は、やはりチェコガラス・ジュエリー博物館(Museum of Glass and Jewellery)。博物館で出迎えてくれたのは、ガラスの棒でできた窓。

ガラスの起源と製法
展示室に入ると、壁一面に広がるガラスビーズやボタンの歴史が時系列で紹介されていました。


- ガラスはシリカや石灰、アルカリを混ぜて高温で溶かすことで生まれ、吹きガラスや型押しで加工される。
- 鉛を加えた鉛ガラスは透明感が増し、まるで宝石のような輝きを持つ。
展示パネルには「Glass Fashion Jewellery」「Wooden Costume Jewellery」「Studio Jewellery」といった分類があり、それぞれの素材や技術がいかに発展してきたかを知ることができます。

ボタンの物語
特に印象的だったのは「Buttons from Jablonec」。
1860年代から量産され始めたボタンは、ガラスや金属、木材など多様な素材で作られ、ヨーロッパ中に輸出されました。単なる留め具ではなく、小さなアートピースとして高い価値を持っていたのです。社会主義時代には国営工場で一括生産されましたが、1989年の体制転換後は再び多様なメーカーが生まれ、現代的デザインを取り入れながら今も世界に出荷されています。今も「コレクターズアイテム」として世界中の人々に愛されています。

戦間期:アールデコや機能主義的なデザインが流行。
社会主義時代(1948〜1989):国有化され、量産体制に移行。
民主化後:小規模メーカーが復活し、伝統と現代的デザインを融合した製品が再び世界市場へ。

コスチュームジュエリーの発展
- ガラス製ファッションジュエリー:ビーズやロカイユを編み込み、色鮮やかな装飾品に。
- 金属製ジュエリー:19世紀後半からは鍍金やハンダ付け技術の改良で、より複雑な意匠が可能に。
- 木製ジュエリー:20世紀初頭からは木のビーズやパーツも登場し、バッグやベルトに使われました。





このように、多様な素材と技術が交差して「ヤブロネツのジュエリー文化」が形づくられてきたのです。



印象に残ったこと
展示室を歩きながら「こんなに小さなビーズやボタンが、時代の流れや社会体制とこんなにも密接に結びついているのか」と驚きました。煌めくガラスひと粒の背後に、産業の栄枯盛衰や人々の暮らしが詰まっている。その歴史の厚みに胸を打たれました。



チェコボタンができるまで
チェコボタンができるまでの動画が放映されており、色々な人が関わり、プロセスを経て制作されているのだということに気付かされました。
























展示されているビンテージチェコガラスボタン
この博物館には、すべての種類のガラスボタンとビーズが展示していると行っても過言でないほどに、数多くのビーズとボタンが展示されていました。日本では見たことのない、珍しい魅了的なボタンの数々に興奮しまくりでした。展示されている多くはもう販売されていないものだそう。展示されていた一部をこちらで紹介します。














チェコビーズ屋巡り
博物館を出たあとは、町のビーズショップを巡りました。街中にビーズ屋さんが溢れているのかと思いきや、実は一般向けに販売しているビーズ屋さんは数えるほど。訪れた何軒かはオンラインショップのみしか販売していないところが多くありました。
その中でも、今回筆者が行った、街から徒歩圏内でアクセスできるビーズ屋さんは以下です。







量り売りのガラスビーズがカラフルに並ぶ様子は、まるで宝石箱を覗いているようで、時間を忘れて見入ってしまいました。
手作業で仕上げられた一点もののボタンや、ヴィンテージのパッケージに入ったビーズなど、ついあれこれと買いすぎてしまいそうになりました。
プラハへの帰路:リベレツ経由のルート

ヤブロネツからプラハまでのバスは便数が少ないため、リベレツ経由で帰るのが一般的。ヤブロネツからリベレツまでは公共交通手段(バスまたはインターアーバントトラムが利用可能)で約30分程度です。
リベレツからプラハまでのバスは筆者御用達のRegiojet、Felixバスなど複数のバス会社から1時間1本くらいの頻度で出ています。

まとめ
ヤブロネツ・ナド・ニソウは、華やかな観光都市ではありません。けれど、ここにはチェコのガラス文化を支えてきた人々の手仕事と歴史が詰まっており、ゆったり時間が流れるチェコの田舎町を体験できます。
小さなガラスビーズやボタンを通して見えてくるのは、芸術と産業、そして暮らしの交差点。博物館で展示を見ながら胸が熱くなり、ビーズ屋で自分だけの宝物を探す時間は、この旅で何より特別なひとときでした。
プラハを訪れる方には、ぜひ1日足をのばしてヤブロネツまで行ってみてほしい。きっとガラスの輝きが、旅の思い出をより鮮やかに彩ってくれるはずです。




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